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短編集その2【春夏秋冬】サンプル



もう1冊、本を発行できそうなのでお知らせしますー。
ずっと出しそびれていたので、やっと……なんですが……φ(`д´)
以前、ゆうびん小説という企画を行ったことがありまして、希望される方にお送りしていた【春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)】という4編からなる小説を、今回まとめて1冊にしました。

セブンデイズ(芹生&弓弦)と花のみぞ知る(有川&御崎)それぞれのお話です。
内容はこんな感じです……


【春の章】(芹生×弓弦)
『今日の休練、気が向いたら顔出すわ』

今までのパターンから推測するに、こういう場合、弓弦さんの「気が向く度」は限りなくゼロに近い。
あの人が気分で行動するのは今に始まったことじゃない。一緒にいてよく驚かされたりもするけれど、そんな『篠 弓弦』の性格をちゃんと理解した上で、すべてをひっくるめて好きだから。
だから俺は彼の恋人になりたいと思った。

……わかってはいるんだけど。
たまに、無性に……やりきれなくなくなる。


★ ★ ★

芹生! なに余所見してるの!」

 突如飛んできたするどい一喝で、俺は我に返った。
驚いたはずみで指から乙矢が外れ、床に取り落としてしまう。乾いた音が道場に響いた。

(……やばい、部活中だった)

「あんた、さっきから戸口のほうばっかり気にして全然集中できてないじゃない。今日は先生が不在だからって気を抜かないで。そんなに帰りたいなら出ていって。それとも具合でも悪いの?」
「い、いえっ……、すみません。大丈夫です」
「そう、じゃあ校内10周してくること」
「え?」
「聞こえなかった? 走りこみしてこいって言ってるのよ。気合入れ直してきなさい」

新部長に任命された、鬼の指導で有名な堤先輩がぴしゃりと言い放つ。
一部始終を見守っていた部員たちから注がれる、『気の毒に』と言わんばかりの視線に見送られながら俺は道場をあとにした。

……ついてない。
がりがりと頭を掻いて、俺は渡り廊下まで重い足取りで向かった。
外はいい天気だ。サボりたい、すごく。
でも、うっすらとでも汗を滲ませないまま戻ったら絶対にばれるだろうし。
項垂れながら歩いていると、窓から花びらがふわりと入ってきて、俺は足を止めた。

桜だ。

そういえば、校内新聞に先週満開になったという記事が載っていたっけ。
誘われるように俺は中庭に向かっていた。三年生の教室の近くに植えられている大きなソメイヨシノを見上げると、連日の強風のせいなのか、もう枝に花はほとんど残っていなかった。
俺がたたずんでいる間にも舞い上げられて散った花びらは、水溜りに捕らわれ、薄桃色の絨毯のように水面を覆いつくす。
そういえば、弓弦さんのクラスはこの木のすぐ近くじゃなかっただろうか?
なんとなく顔をあげてみると、窓が一箇所だけ開いていて、そのすぐ近くの席に誰かが頬杖をついて座っていた。
なにをしているんだろう。今日は日曜日なのに……。んだか、ものすごく見覚えのある横顔だけど……。

「……っ!」

その数秒後、俺は4階の教室に向かって駆け出していた。


【夏の章】(有川×御崎)
「あっ、見て見て! 御崎、見て!」 
いつものようにふたりで、駅へと向かう帰り道。
三歩ほど前を歩いていた有川が、突然大声を上げて頭上を指さした。
俺はその指先の方向へ目を向けたけれど、あるのはなんの変哲もない、闇に包まれた空だけだった。

「おしい、消えちゃったね」
「何が?」
「御崎、今夜参加する? 俺は向こうのコンビニで買出ししたら、またすぐ戻ってくるんだけどさ」
「……だから、なに。全然話が見えないんだけど……」
「一階の掲示板にポスター貼ってあったでしょ」
「?」
「あれ、知らない? 今日十二日だよね。ペルセウス座流星群の屋上観測会だよ。ほら、毎年この時期にやってるじゃん。天文部流星班のやつらが主催でさ」

そういえば、試験日程表のとなりに、流れ星が描かれているポスターが貼り付けてあったかもしれない。俺はそういったイベントごとには無頓着だし参加したことがないから、毎年恒例だったとは初耳だ。

「って言っても、このあたりは夜中でも明るいだろ。あんまり期待できないんじゃないか?」
「でもほら、今年は新月だし!」
「どうせみんな観測会を口実に、騒ぎたいだけなんだろうな」
「……御崎、するどいね」
「部員でもない生徒が夜中に出てきてまで参加する理由なんて、だいたい察しがつくよ」
「俺は、わりと真面目に観測するつもりだけどなぁ。ね、御崎も一緒に行こうよ」

肩にかけていた鞄をぶんと振り回して、有川は心底たのしそうに笑った。

「いや……、やめておく」
「え、どうして? 用事ある?」
「ああ」
「そっか、残念だな。御崎といくつ願掛けできるか、競おうと思ったのに」
「……願掛け?」
「そう。流れ星が消えちゃう前に願い事を三回唱えると、叶うっていうでしょ」

★ ★ ★

乗客の熱気で曇った窓ガラスをぼんやりと見つめながら、俺は有川の言葉を思い出していた。
あんなこと、本気で信じているのだろうか。
明確な根拠はどこにもないのに。
流星なんて、所詮は彗星の塵にすぎない。

『有川って……、意外とロマンチストだな』
『えっ、そう? うーん、でも言われてみればそっか、星に願いをってロマンだよね。御崎は、あんまり興味
ない?』
『天体観測は、嫌いじゃないけど。願いが叶うとか……、迷信だろ。俺は……信じないよ』
『…………』

有川が、俺の言葉の意図を探ろうとしていた。顔を見なくても、伝わってくる空気でわかる。
街灯に群れている虫の影を眺めながら待つ沈黙は、とても長く感じた。
生ぬるい風にのって、有川が小さく息を吸い込む音が聞こえた。続く言葉を待ったけれど、結局有川は「そっか」と微笑むだけで。 

そのまま、俺たちは別れた。


【秋の章】(芹生×弓弦)
秋といえば? そう問われたら、たいていの人間はこう答えるだろう。
食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、そして芸術の秋。
俺は、『秋だから』芸術に触れましょう、という理由で、強制的に催されるこのイベントに疑問を抱く。

……まぁ、ただ単に面倒くさいだけなんだけど。

★ ★ ★

「わかってねーなあ、篠」

画家気取りに水彩筆を立ててポーズを決めながら、内海は俺を鼻で笑った。

「篠 弓弦ってヤツは美意識に欠けるんだよな。日本人なら、こうして四季の風情を大切するべきじゃないか? ん?」

おまけに意味もなく上から目線だ。
なんとなくムカついたので、俺は内海の背中に軽く蹴りを入れてやった。

「内海が日々風情とやらを意識して生きてるとは思えねー。じゃあ聞くけど、おまえにとって『秋』といえばなに?」

鉛筆をマイク替わりにしながらたずねると、「そりゃあ、食欲の秋だろ」と内海はふんぞり返って答えた。

「……底の浅い主張をどうも」
「日本人ならマイノリティよりマジョリティに賛同するべきだとは思わんかね、弓弦くん」

雲ひとつない、澄みわたった晴天。まさしく秋晴れの土曜日。
今日は九月の恒例行事である写生大会の日で、全校生徒が邦華の裏にある公園に集まっている。公園といっても面積は広大だ。生徒は皆、一年も二年も三年も関係なく、散り散りになって自由に行動している。寝ているやつもいるし、堂々といちゃついてる男女も……、っていうか、真面目に描いてるやつなんていんのか?

「あーあ、休みだっつーのになんでこんな……、ッ痛!」

いつもの休日ならまだ余裕で寝ている時間だ、と萎えていると、後ろから誰かに思い切り頭を引っ叩かれた。振り向くと、腰に手をあてて立っている小池ちゃんが居た。凶器は丸めた本のようなもの。

「しーの、下品なあくびをするんじゃないって何度言えばわかるのよ」
「してないっつの!」
「あら、そう? それはごめんなさいね」
「小池ちゃん……、悪いと思ってねーだろ」
「当たり前じゃない。あんたは日頃の行いが悪いから誤解されんのよ」

艶やかな黒髪を指で梳きながら、小池ちゃんは内海の隣に腰をおろした。
言いがかりだけならともかく暴力まで振るっておいて、なんつう態度だ。
「いや、グッジョブ小池ちゃん。篠はマジであくびする3秒前だった」
内海が親指を立てて、小池ちゃんを褒め称える。

「おい内海、勝手に決めつけんな」
「そんなことより、あんたたち呑気に遊んでるようだけど描けたの? 完成した生徒から帰っていいって、知らないわけじゃ
ないでしょうね」
「は?」
「知ってるよ。俺はあとこの空の色塗って終わりだし」

内海は得意げに、八割がた完成している風景画を小池ちゃんに披露した。
ちょっと待て、一緒になって喋ってたくせに、いつの間にそこまで進んでたんだ。

「は、って……、まさか篠。……うわ、真っ白じゃない! あんた今までなにしてたわけ? もうお昼すぎてるのよ!?」
「え、ええ? つーか完成次第って……そんな事言ってた? いつ!」
「……言ったというより、書いてあったな。『写生会の注意事項』に。今年から色々変更があるんだってさ」

内海が両手の人差し指で、空中に紙を描くようなジャスチャーをした。
もしかすると、昨日帰り際に配られたプリントのことか。どうせたいした内容ではないだろうと、机のなかに突っ込んだままだ。もちろん、目など通していない。
俺の焦りを悟ったのか、内海と小池ちゃんが哀れむような目でこっちを見ていた。

「……な、なんだよ」


【冬の章】(有川×御崎)
「はっくしゅん !」
「……っくしゅ」

同じタイミングでくしゃみをした俺と御崎は、思わず互いに顔を見合わせた。

「あははっ、息ぴったりだったね」
「有川のほうが少しだけ早かったんじゃないか?」
「御崎の声が小さいから、そう感じたんじゃない?」
「違うって、有川が先だった」
「えー? そんなことないよ、一緒だった……」
「はいはい、ストーップ。僕がこの場の証人になりましょう。ふたりとも全く同じ、シンクロしてましたよ。御崎くんも有川も、じゃれあうのはいいけど程々にね、手も動かそうね」

俺たちのやりとりを見かねたのか、書類に目を通していた辻村先生が仲裁に入った。
敬愛している先生に窘められた御崎は、顔を赤くして小さな声で謝罪する。

「……すいません。でも、じゃれ合ってなんかいませんよ」
「じゃれてたよ。僕の存在を忘れるほどにね」

笑いながら肩をすくめる辻村先生に、御崎は首をかしげた。

「どういう意味ですか?」
「クールな御崎くんにしては珍しいじゃない。普段人前で声を荒げるというか、感情的になることって滅多にないでしょう」

今度は俺が首をかしげた。そうかな、御崎って俺の前だといつもこんな感じだと思うけど。

「は!?」

御崎がものすごい形相でこっちを見た。

「あれっ、俺、声に出してた?」
「出てたよ……思いきり」
「へえー、有川の前では、いつも、ね。ふむ。そうかそうか」
「ちょっ……、辻村先生。何ひとりで納得してるんです……。言っておきますけど、そんなことありませんから。絶対」
「いやぁ、隠さなくても。良い傾向だよ」
「……仰っている意味がわかりません……」

御崎は照れているのか、急に席を立って資料室に引っ込んでしまった。御崎の姿が見えなくなった後、俺と
辻村先生はこっそりと笑いあった。

「あの子の表情が豊かになったのは、有川のおかげかな」
「え?」
「御崎くんって、同年代の子に比べてやけに大人びてるというか、若干近寄りがたい雰囲気があったでしょ。
周りとうまくやっていけてるのかなって心配してたんだけど、最近の彼を見てると杞憂だったかなって思うよ」
「俺、別になんにもしてませんよ。ただ、一緒にいるだけで……」
「うん。それでいいんだよ」
「?」
「そのままの有川で、あの子の隣にいてあげて」

俺は、御崎がこもっている部屋に目を向けた。
ドアの向こうの御崎を想像する。聞こえているのかな。
聞いているなら、今の辻村先生の言葉を御崎はどう受け止めただろう。この場にいたなら、きっとそんなことないって否定するんだろうけど、事実ならいいなって思う。俺が御崎を変えたなんて、大層なことをしたなんて自覚は勿論ない。
でも、俺よりもずっと御崎を知っている先生がそう感じるのなら、きっとそうなんだろうと、ちょっと自惚れてみたりして……。

*―゚+.。o○*☆*○o。.+゚―*

詳細はまたお知らせしますねー。
ご興味がありましたら、どうぞよろしくお願いします。


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PURSLANE(パースレイン)というサークル名でたまにイベントに出ることもあります。
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