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【花のみやこで・SS】基晴×晶

久しぶりにお題にチャレンジ!

辻村基晴×蓮見晶で創作するならお題は
,い弔帰りたい場所/∩曚い魎咾たいんです/CΑν墜訐 です
http://t.co/Dd4kPnIkGo

こ、これは……。
診断メーカーなのでランダムなのですが、まるでこの2人のために用意されたようなお題が出ました。
もとあき(基晴×晶)で書くのははとても久しぶりで、2回目です。
なのでちょっと慣れてない感が否めませんが、読んでいただけると嬉しいです。







すっきりと晴れた空がまぶしい、ある夏の日のこと。
自室の窓から、ココン、と不規則な音が聞こえた。いつもの合図。僕は読書感想文を書くために読んでいた本から目を離し、窓を開けた。

「晶! たすけてくれ!」

基晴が、血相を変えて僕のもとへやってきた。
……まだ朝の6時だというのに。まったく、仕方のないやつだ。基晴が時間を考慮せず、こちらの都合などおかまいなしに僕のもとへ訪れるのは、今に始まったことではない。僕は無言で窓から顔を引っ込めて、階段を静かに下りた。玄関の戸を開けると、蝉の合唱と共に湿った微風が僕の肌を撫でていった。朝顔の開花を確認しながら横を通り、彼が待つ場所へと向かう。

「おはよう、基晴。ラジオ体操の迎えにはまだ早いよ」
「違うだろう! 晶、さっき僕はお前に何て言った。助けを求めていなかったか!? それなのに、悠長に歩いてくるなんてひどいじゃないか。まったく、人格を疑うな。いつからそうなった。昔のおまえはもっと人情味あふれた男だったぞ」
「しーっ、静かにしろ。母が起きる。……日曜の早朝から他人の家の前で大声を出すような人間に、人格を否定される謂れはない。お前こそ、非常識だと思わないのか? 僕が気づかなかったら、どうするつもりだったんだ」
「……それは、ごめん。でも晶なら起きてると思って」
「本を読んでいたのに、お前に邪魔されたよ」
「え!? 朝から? あいかわらず本の虫だなぁ、晶は」
「……夏休みの宿題。読書感想文用の本だよ。この間、一緒に図書館で選んだろ。基晴のことだから、枕にでもして寝てるんだろうけど? ちゃんと返却期限は守れよ。あまり司書殿を困らせるな」
「ああー……、あはは。僕は文学方面はさっぱりなんだ。ええと、晶が借りたのはゲーテだったか?」
「『友情』だ」
「ん?」
「武者小路実篤」
「へえ、珍しいな」
「基晴。お前、何をしに来たんだっけ? 僕はお前が手にぶら提げている籠がとっても気になっているんだけど。手土産かな」

本来の目的をすっかり忘れている基晴にあきれ、僕は苦笑した。

「あっ! そうだった、いやそうじゃない! 大変なんだ。晶、この鳥を診てくれ」
「とり?」

思い出したように慌てた基晴が、竹で編まれた籠の中身を僕に見せた。覗くと、目の覚めるような美しい青色の小鳥が一羽、ぐったりとしていた。

「オオルリじゃないか! どうしたんだ?」
「実はさっき、この鳥が僕の部屋の窓に激突したんだよ。慌てて保護したんだけど、ずっと動かなくて……。死んじゃったのかな。晶は鳥を飼っているだろう。なにかわからないか?」
「ぼ、僕に言われても……。僕の家にいるのはオウムだし、面倒をみているのは主に祖父だし」
「そこをなんとか!」

ぱん、と両手を合わせ、基晴がすがるような目で僕に訴えかけてきた。
……そんな顔をするな。僕はお前の頼みごとには弱いんだから。でも、こればかりは僕にもお手上げだ。

「そうだ! 基晴。たしか、近所に病院があったはず……」
「まさか山科先生のところ? あそこは家畜診療所だぞ」
「小鳥くらい、診てくれないかな」
「さすがになぁ……。専門外じゃないか?」

僕と基晴は、微動だにしない小鳥を見つめて途方にくれた。まさか死んではいない、と思うけど……。
意を決して、僕は小鳥を手のひらに乗せた。

「…………」

小さな鼓動がしっかりと伝わってくる。外傷もないようだし……。

「大丈夫だよ基晴。ぶつかったショックで、失神しているだけだと思う。きっとじきに目を覚ますよ」

自信があったわけじゃない。けれど僕は、不安そうな基晴をなんとかしたくて、安心させるために微笑んだ。

「本当?」
「僕が1度でも嘘をついたことがあるか?」
「……あるだろ。昔からお前は具合が悪いときはすぐに隠そうとする。僕にはお見通しなんだぞ。だって僕は、晶の……、」

基晴は、なぜかそこで1度、ひと呼吸置いた。

「え?」

その先に続くであろう言葉を待つ。
……そこで言い淀むのは無しだ、基晴。期待をしてしまう。
あるはずのない可能性と未来を、幻視してしまう。

「晶の親友で、幼馴染なんだから!」

容赦ないほど朗々と、基晴は告げた。
そうか。親友。……幼馴染。

「晶、どうした? 泣きそうな顔してる。ぼ、僕なにか変なこと言ったか?」
「……いや。その通りだと、思って」
「え? 言っている意味がわからないぞ」

わからないのか? 基晴。
……そうだ、わからないんだよ。僕の『幼馴染』である限り、お前には、僕の気持ちなんて。
僕はいつからこんなにも欲深くなったのだろう。いつから、お前とは幼馴染のままじゃ嫌だと、思うようになってしまったんだろう……。

基晴が、僕の身を案じてくれる。
僕を頼ってくれる。
僕の隣で笑ってくれる。

幸せじゃないか。これ以上、彼に何を望むっていうんだ。
こんな一方的な想いを貫いて押し付けたところで、困らせるだけなのに。

「あっ」

基晴の声で我に返る。持っていた籠が細かく振動したかと思うと、中から青い影が羽音と共にいきおいよく飛び出した。小鳥はあっという間に僕たちの視界から消えた。まるで青空のなかへ溶けてゆくように。

「行っちゃった……」

名残惜しそうに呟く基晴の背中を、僕は軽く叩いた。

「ほら、言っただろ。生きてるって。良かったな、元気になって」
「……ああ。晶の言うとおりだ」

基晴が、空の色を閉じ込めた瞳を細めて笑った。僕は、ほっと胸を撫で下ろす。良かった。やっぱりお前には笑顔が似合う。

「それにしても晶、よくあの鳥の名前がわかったな」
「図鑑でしか見たことがなかったけど、すごく綺麗な鳥だから印象に残ってた。オオルリは夏、日本にやってきて、東南アジアで冬を越す渡り鳥なんだよ」
「へえー。じゃあまたいつか、お礼をしに僕たちのところへ帰ってくるかも」
「……ど、どうしてそうなる」
「だって、助けてあげたじゃないか」

見返りを求めようという強欲さが基晴にあるとは到底思えない。彼はただ純粋に、思ったことを口にしているだけなのだろうけど。

「はぁ……。お前の発言をどこまで本気と受け止めていいのか、僕はたまにわからなくなるよ。野生の鳥にそんな期待、するだけ無駄じゃないか?」
「もー、つまらないこと言うなよ。僕が鳥ならそうするぞ。恩は忘れない」
「基晴が?」
「なんだよ、その目は」
「どうせお前は鳥になっても奔放に飛び回って、女遊びにうつつを抜かしてるうちに、恩なんてすっかり忘れるに決まってる」
「……信用ないなぁ僕は。ちょっと傷ついたぞ。……晶が鳥なら……、そうだな、晶はちょっと抜けているところがあるから、道に迷って泣くんだよ。『たすけてー、もとはるー』って。僕の姿を発見した途端、あわてて駆け寄ってくるお前は可愛かったなぁ」
「おっ……お前、いつまで覚えて……。僕が迷子になったのなんて、十の頃、それも1度きりだぞ!?」
「晶の泣き顔があまりにも可愛かったから、忘れられないんだよ」
「なっ……」

僕はくすくすと笑う基晴の胸元に、オオルリが入っていた籠を押し付けた。

「も、もう用事は済んだだろ。じゃあな」
「晶」

踵を返して家の中へ戻ろうとした僕を基晴が呼び止めたけれど、僕は振り返れなかった。
−−−−こんな、顔、見せられない。

「迷子の小鳥になった晶を1番に見つけるのは僕だ。僕以外のやつがお前を助けるのは、なんだか面白くない」

基晴。お前はひどいやつだ。からかっているのか? 本気なのか?
……いつもそうやって、人の心をかき乱すんだから……。

「…………、も」
「え?」

振り返らないままで答えた。

「僕も、基晴の元へなら迷わず帰るよ。お前が待っていてくれるなら……迷わない。絶対」

たとえこの先、僕たちが抗えない運命に引き裂かれ、離れ離れになったとしても。
僕の帰る場所は、お前のところがいい。

「だから、いつでも窓は開けておいてくれよ。基晴」



END

中学生時代を想像して書きました。中学2年生ぐらいの夏休み。
ラジオ体操がこの時代から放送されていたのか……調べたんですが、ちょっと微妙で;花のみやこでの時代って大正……昭和初期……?でいいんでしょうか。いいのかな(・_・;)
晶が武者小路実篤の『友情』を読んだと言ってますが、発表されたのは1919−20年だそうです。えーと……細かい設定は想像するしかないのであまり考えないほうがいいと思います(笑)


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