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【セブンデイズ】せりょゆづバレンタインSS

去年はイラストでしたが今年はせりょゆづSSを書きました〜(*'ω'*)
また勝手な妄想設定が散りばめられておりますが、ご了承願います……。

なぜフライングで13日にアップしたのかというと、本編に合わせてということで。
2月14日ではなく、前日のお話です。

それでは、【続きを読む】からどうぞ!




「芹生、ボタンどうした」
「ボタン?」
「ほら、袖の」
「あれ。とれてる……。どこで落としたんだろ」
「盗られたな」
「と……、え?」
「邦華の制服って、某デザイナーが手がけたらしーじゃん。ボタンもほら、よく見ると特徴あるだろ。マニアの間では1コ8000円で売買されてるって話」
「弓弦さん、それ、誰に聞いたの?」
「誰っつーか、ウワサ」
「……デザイナーは本当だけど、取引云々っていうのはデマだよ。しかも結構前に流れた……、たしか俺が入学して間もない頃だったかな」
「…………まあ、んなことどうでもいいんだけどさ。あー、腹減ったー!」
「…………」

本当に、噂が真実だろうと虚偽であろうと、俺にとってはどうでも良いことなのだ。
放課後、いつものように、芹生は俺を東神奈川まで送り届けようとしてくれている。

だが……。

◇◇◇◇◇◇◇◇

目的地到着のアナウンスが聞こえてきて、俺は颯爽と立ち上がった。

「え、弓弦さん。ここ横浜だよ。降りるの?」
「あれー? 言ってなかったっけ。今日さー、幼稚園のときの友達と会う約束してんだよ」
「……おとついは中学校時代の友人で、その前は小学校……だったよね。どうしたの? 急に旧友関係を大切にし始めちゃったりして」
「べ、べつにー。なんとなく。昔のアルバム眺めてたらさ、元気にしてっかなーと思って。あ、もちろん友達ってもオンナじゃねーからな。心配すんな、同姓! 男友達だし」
「……俺としては、男友達であることのほうが気がかりなんだけどね」
「バーカ、どうにかなるわけねーだろ。んじゃーな芹生。また明日」
「……う、うん……」

発車のベルが鳴り、俺は慌てて車内から降りた。電車がゆっくりと動き出す。芹生が、何か言いたげな顔でこっちを見ていた。

さすがに、怪しまれても仕方がない。
もちろん、同級生と会うっつーのは大嘘だ。
だが、それも今回で終わり。今日中に、俺は決着をつけなければならない。

なにしろ、バレンタインデーは明日なのだから。

◇◇◇◇◇◇◇◇


俺はとあるデパ地下へ足を運んでいた。
お目当ては、バレンタイン特設会場のチョコレート売り場。当たり前だが、周囲には女・女・女。女しかいない。いや、彼女に連れられて来たらしい男の姿も、ちらほら……。ひとり制服のままぽつんと立っている俺は、明らかに浮きまくっていた。

(うわっ……)

どういうことだ、これは。昨日より……、いや、今までで1番の客数だ。最終日ともなれば、それなりに空いてるだろうと思ってたのに! 完璧な誤算だ……。手作りならまだしも、こういうもんは1週間くらい前から用意しとくべきじゃねーの? ……あ、俺も人の事言える立場じゃないのか。

あれこれ品定めをしている女子たちの気迫が熱気に変換され、特設会場の周囲にはただならぬ空気がたちこめていた。さらには化粧や香水のにおいに目眩がして、俺は早々に戦線離脱する。時計をみると、まだ18時15分。閉店までは2時間ほどある。
スタバでひと休みしてこよう……。うん。

バレンタインデーという行事は、基本的に女子から男子へ、愛情の告白としてチョコレートを贈る日だ。男という立場である以上、俺が貰う側であることは、言うまでもない。が、それはつい最近までの話だ。
芹生と付き合い初めて4ヶ月。そして迎えた初めてのバレンタインデー。

交際している以上、誰もが周知の世界的行事に対し、無関心でいるのはむずかしい。
芹生もなんとなく「バレンタイン」というキーワードに対して意識している様子だったが、あえてお互いその話題には触れず、この数日を過ごしていたように思える。

俺たちは男同士だけど、男がチョコレートをあげてはならない、というきまりはないはずだ。欧米なんかでは、男も女も、恋人に限らず親しい人に贈り物をする日でもあるらしい。つまりそういうことだ。俺が芹生にチョコレートを渡しても、なんら問題はないのだ。

悶々と考えていたら、いつのまにか閉店まであと1時間をきっていた。
もうそろそろ、客の入りも途絶えかける頃合いだろう。
俺は飲みかけのチャイティーラテを下げ、再び戦場へと赴いた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

「…………。」

思いがけない光景に、俺は絶句した。
女子の数は、さきほどとは比べものにならないくらい減っている。が、客数に比例するかのように、チョコレートの数も減っていた。残っているのは、そこまで強調しなくても、というくらいでかでかと『義理』の文字が書かれているハート型のチョコ。

いや、義理じゃねーし。本命だし。

ネクタイや靴下、あるいは何故かボクサーパンツとセットになっているチョコレート。
……いや、いやいや。これは明らかに会社の上司とか、父親とか……、ある程度年齢層が高めの相手がターゲットの商品だろう。高校生相手にプレゼントするものではない。

あとは、チロルチョコの詰め合わせ。
……チロルチョコは美味しいけど、恋人相手に贈るにはあまりに色気がないというか。……どうしよう。他の店に寄る時間もない。あ、コンビニなら、……って、だめだ。相手が芹生なんだから、それなりに高級そうに見えるチョコレートでなければ格好がつかない。きっと芹生は、『そんなの気にしないよ』と笑って受け取ってくれるんだろうけど。

「お兄さん、ね、そこの。お兄さんってば」

顔を上げると、レジに立っていた20代前半くらいの女性店員が手招きしていた。

「? お、俺……ですか」
「そうよ、ほかに男の子いないでしょ。ちょっと来て」
「はぁ」

呼ばれるままに近づくと、店員はカウンターの下からシャンパンゴールドの箱を取り出して俺に見せた。中には小さなトリュフや、ハートのチョコが詰まっている。それなりに値が張りそうだ。

「これ、ダロワイヨのラヴィアンローズ。どう?」
「どう、と言われましても……」
「あー、もう。鈍いな。これを彼女に渡してあげなさいって言ってるの」
「え!? いや俺そんな」
「ふふん、隠さなくても。これ、完全受注生産なんだけど、ちょうどキャンセル分がひと箱出ちゃったのよ。もう閉店だし、半額でいいから、ね」
「でも……」
「まだ用意してないんでしょ。この間から売場をウロウロしてて、結局毎回買わずに帰っていくお兄さんの情けない姿、わたし見てるんだからね」
「は!?」

「記憶力には自信があるんだ」と、女性店員はニヤッと笑みを浮かべた。こ、こわい。

「照れなくてもいいわよ。今は男子から女子に贈る、『逆チョコ』が流行ってるんだよ。知らなかった? わたしが見た限りでもお兄さん以外に何人か男の子が買いに来てたなぁ。恥ずかしそうに、顔赤くして」
「ぎ……、逆チョコ?」

そんなの初耳だ。

「そうそう、お兄さんと同じ邦華の制服着た男の子もいたよ」
「え?」
「君と同じように店内をウロウロしてて、ショーケースの中じーっと見てたから、声かけたんだけど『なんでもないですっ』って慌てて帰っていっちゃった。で、どっかに引っかけたのかな。これ落としていったわ」

そう言うと、女性店員はエプロンのポケットからボタンを取りだして、カルトンに置いた。

「これ……」
「うん、その制服のボタンでしょ。わたしの従兄弟も邦華に通ってるから、覚えてたのよね。ボタンのデザインに特徴あるし」
「……そいつの顔、覚えてる?」
「もちろん。言ったでしょ、記憶力には自信があるって。至近距離だったし、よく覚えてる。お兄さんもかっこいいけど、あの子もイケメンだったなー。黒髪で、襟足がちょっと長めで、くっきり二重のスッとした目でぇ……」
「左目の、瞼の上あたりにホクロなかった?」
「あ、そうそう! なぁんだ、お兄さんの友達?」
「……ううん。もっと、ずっと……大切な人」


◇◇◇◇◇◇◇◇


俺は、ちいさな紙袋を手に提げて、店を出た。
つまり、芹生は俺と同じことをしてたってわけか。結局、チョコレートは買えず仕舞いだったんだろうな、情けないやつめ。

明日は特別な朝だから、誰よりも先に、1番に渡してやろう。
慌てふためく芹生の顔が、目に浮かぶ。


親愛なる君へ。
赤い包みのチョコレートに、小さなリボンをつけたボタンを添えて。


■END■

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